フランク・モーガン
時は1950年代中頃、ハードバップの誕生と共にシーンに颯爽と登場したフランク・モーガン。しかしモーガンの華々しい日々はそうは長く続かず、彼が心底傾倒していたパーカーの人生の暗部までをも生き写しの生活に溺れてしまい、そのヘロイン常用の結果何と数十年間を獄中で過ごす運命が待っていました。しかしモーガンの素晴らしくも偉大な点はその長い空白を強靱な精神力で克服、80年代中期には奇蹟のカムバックを果たします。当時私は、彼のそのプロフィールを初めて知りカムバック盤を聴いたとき涙が滲んだことを記憶しています。人間、どんな失敗からでも悪条件の下でも、頑張れば何だって出来るのだというそのヴァイタリティが凄い。その後のモーガンの快進撃には人生の中で最も充実すべき時期を図らずも獄中で過ごしてしまったこと、そんな失った日々を今取り戻すかのような気迫の塊りを感じます。最新作"Reflections"では冒頭からのぐっとくるアルトの一撃がたまりません。パーカー直系の一種ムーディーな響きのサウンドを基本に、ビバップの黄金時代を思わせるホットさも併せ持っています。(以上は2006年某月に書きました)

そのモーガンがパーカーと一緒にアルトを吹いていた貴重なセッション
Charlie Parker at Jorayr Zorthian's Ranch,July 14th,1952 にもご注目下さい。

appleJam特選 JazzTreasures
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Jewel Jazz Club
ジョン・ヒックス&フランク・モーガン
音に現れる作用反作用感がまさに名匠の手によるリトグラフの趣、文句なしこれは大人のジャズ盤
John Hicks Twogether CD (Out of Stock)

二人で一緒に、をワンワードにしたタイトルが洒落ていますが実際過去最も多くの
この手の言葉遊びがあるのがジャズ盤の特徴でもありますね。それはさておき、
2005年11月にロスでライヴ録りされた今作では全7曲のうちヒックスのソロが3曲
ある以外はフランク・モーガンとのシックなデュオ演奏が収められています。ずっと
表舞台で活躍してきたヒックスとは対照的に、若いときパーカーに心髄し過ぎた
結果自身もヘロイン中毒になり人生の半分を獄中で過ごしたモーガンと。しかし
出所後の活躍目覚ましい彼の、そのジャズへのひたむきな想いがまさに結集し
た感じの共演です。全編をアダルティーなムードが漂う中、ヒックスに鼓舞され
力強さを増す#2.Night in Tunisia モーガンのアルトと、#5.Round Midnight
後半コントラストのあるヒックスのピアノ・ソロはあたかも名匠の手による極上
リトグラフの趣です。ステージの様子を思い浮かべつつじっくりと聴きたい1枚。

2010 USA HighNote HCD-7209
★★★★

失った時代を今に取り戻すかのような「若き」情熱に満ち溢れた音
Frank Morgan A Night in the Life CD \2,500tax in
2004年に出た同じくHigh Note盤と同様、今回もまた同じ
メンバーでのライヴ盤。恐らくは常時警部留守のピアノと
のマッチングがモーガン自身も相当お気に召しているもの
と想像します。360度全方位、何処を切り取ってもパーカー
ムード満点のジャズ、それでいながら中味は文句無しモ
ーガン・ジャズになっている。彼の心の深層部分では今も
パーカーと気持ちが繋がっている、そんな感覚がモーガン
を聴く醍醐味であること、最近感じるようになりました。

2007 USA High Note HCD-7164
★★★★

Frank Morgan - alt sax
George Cables - piano
Curtis Lundy - bass
Billy Hart - drums

芳醇さ溢れるムーディーでジューシーなアルトがまさに天下一品
Frank Morgan Reflections CD (Out of Stock)
恐らくはこれをお聴きになる百人中百人の方が冒頭のマイルス・チューン
「Walkin'」のマイルドかつふくよかなアルトの響きにしてやられることと思い
ます。かくいう私もその一人、これはまるで40年代ダイアル時代のパーカー
が抜群のハイクォリティ・サウンドで今蘇ったかのように聞こえます。ロニー
・マシューズのピアノやビリー・ハートのドラムまでが往時のフィーリングに
生き写し。この気持ちは2004年盤の衝撃とはまた異なる意味で、パード
の世界に住み続ける一人のアルト吹きの人生を見る思いがします。そし
てその余韻は爽やかでハッピーなものであることがとても印象的です。

2006 USA High Note HCD-7154 - Independent Jazz
★★★★★

Frank Morgan - alt sax
Ronnie Mathews - piano
Essiet Essiet - bass
Billy Hart - drums

もっとスタンダード!という感じの比較的ムーディーな続編、やはり歌心のある人
Frank Morgan Raising The Standard 〜 Live at the Jazz Standard Vol.2 CD \2,500tax in
大好評だった前作と同じメンバーによるライヴで今回も
あくまで正攻法で作った大スタンダード集という感じ。スロ
ーでムーディーな曲が多いせいか、従来のパーカー風の
アプローチの中にもこれがモーガンなんだという彼自身の
語り口を時々感じます。終始パーカー色が濃厚だった前作
とこの盤、両方とも同じ時期、同じ店での収録なのに不思議
です。アルトの音も結構柔らかくて、そこがマクリーンやス
ティット達とは決定的に異なる要素かと感じます。

2005 USA High Note HCD-7143 - Independent Jazz
★★★

Frank Morgan - alt sax
George Cables - piano
Curtis Lundy - bass
Billy Hart - drums

大スタンダードとの気迫の正対は、自身内部のマグマの完全燃焼を生んだ
Frank Morgan City Nights 〜 Live at the Jazz Standard CD (Out of Stock)
モーガンが全身全霊を投入したこのライヴ・レコーディング、今望みうる最高の
名手ばかりを従え、鬼気迫る作品として仕上がっています。ここにあるジャズは
50〜60年代のジャズそのもの。恐らくはモーガン自身にとって今こそがその時代
なのかも知れません。世の中が激変してしまう70〜80年代に獄中に居たことで彼
の精神や感受性が当時のままタイムスリップしてきたかのようです。70年代末期、
ペッパーと歴史に残る吹き込みをものにしたケイブルスがここでも熱い!モーガン
の気迫からかランディとハートのリズム隊も桁違いに最高のプレイをしています。
パーカー直系を自負するモーガンのこと、大スタンダードの中でこそパーカーと
自分をひとつに重ねることが可能だったのかも知れません。文句無し最高!

2004 USA High Note HCD-7129
★★★★★

Frank Morgan - alt sax
George Cables - piano
Curtis Lundy - bass
Billy Hart - drums