テレンス・ブランチャード(Terence Blanchard)
作品全体を包む、思い入れたっぷりの叙情感はあたかも天空の魂と心を交わす詩人がしたためた叙情詩のようにも感じます。テレンスのこの徹底した美意識には間違いなく近代のフランス音楽がそのルーツにあるように感じます。最近の他のアメリカ映画でも音楽監督として彼の名を見る機会がありましたので、ひとつのコンセプトを持つ作品を総監督として仕上げる作業にも充分にこなれた技術を今は持っているように感じます。
神の意志として星になる運命を与えられた人々のために捧げる鎮魂歌
Terence Blanchard / A Tale of God's Will CD \2,971tax in
a Requiem for Katrina
全編が交響詩のような拡がりを持つ大作で、まさに一大叙情詩といえる内容を
しています。ジャズという枠を超えて作られたこの作品は、スパイク・リー監督に
よる、ハリケーン・カトリーナ被災後のニューオリンズを題材にしたドキュメンタリ
ー作品に寄せるサントラかイメージ・アルバム的位置づけにある模様です。ハリ
ケーンにより脆くも壊れてしまった街、そこで悲しくも天空に旅立ってしまったいく
つもの魂に、永遠の安らぎを与えたもうと神に祈るかのような旋律が拡がってい
きます。楽曲毎に様々な情景がまぶたに浮かんでくるのですが、それは聞き手
一人一人で見えるものが異なりそう。でも言えるのはこれが明日に繋がる種類
の鎮魂歌であるこは確かです。#7.the Waterは特に感動的。悲哀の中にも確か
に一種の勇気のような感情がわき上がるのが不思議です。鎮魂歌とは生存者
が起きてしまったことを受け入れるためにどうしても必要な精神的儀式なのかも
知れません。何度も何度も、終日聞き惚れていたい秀逸でかつ感動的な作品。
2007年 USA Blue Note
★★★★★