アーヴィン・メイフィールド (Irvin Mayfield)
ニューオリンズ・ジャズ・シーンの中で最も注目されている若手トランペッターのホープがこのアーヴィン・メイフィールド。Los Hombres Calientesでの颯爽たるパフォーマンスは、彼が今後も単にメインストリーム・ジャズの枠の中に収まりきれない意欲的な若者であることを物語っていますが、そのアーヴィンのこと、これら一連のメインストリームの作品でもその存在感は半端ではありません。中でも特筆はその天性の才が炸裂するハイノート・トランペット、これを聴いたら大抵の人はその瞬間から彼のファンになると思います。最新作 "Strange Fruit"は若いに似合わず入魂の社会派コンセプト・アルバムとして仕上がっています。

アーヴィンのこの"Strange Fruit"を聴いたとき、私は思わずMax Roachの1960年盤"We Insinst!"を引っ張り出して聞き比べてしまいました。1960年頃はまさに公民権運動とブラックパワーの台頭が全米を覆い尽くそうとしていた時代で、アメリカに生まれた黒人にとってアフリカとアメリカとの間にある歴史と社会的背景を抜きにしては自らのアイデンティティを見つめることすら出来ないとする意識が強まっていた頃。奴隷解放宣言から100年目に当たる1963年を目前にしていた1960年頃、その記念碑的な作品を作ろうとしていたOscar Brown,JrとAbbey Lincolnを通じて知り合ったローチはすぐさまその趣旨に意気投合し、当時急進的なジャズ・レーベルとして注目を浴びていた ※Candid からナット・ヘントフの監修によって、歴史に残る問題作"We Insint!"をリリースしました。それから40余年を経た今、アーヴィンが放ったコンセプト・アルバムにそのローチのアルバムの影を見るということは、恐らくは例え今後さらに半世紀が経とうと、あるいは何世紀経とうとも、アメリカに生まれた黒人は民族としてアフリカ以降の黒人(つまり、それはアフリカン・アメリカンのことですが)の歴史を自分自身の歴史としておかなければならない 〜 と言っているような気がしました。残念ながらアルバム中の歌詞が(意味が)不明で、以上はあくまでも私がそう感じたということに過ぎないのですが。

※Candid 〜 シーンから高い評価を得ながらも僅か9ヶ月の活動で倒産してしまった稀少かつ貴重レーベル。その僅かな活動期間に24枚もの優れた作品を世に残しました。

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Los Hombres Calientes

New Orleans Jazz Orchestraをバックに奏でる壮大な組曲
Irvin Mayfield Strange Fruit CD \2,500
tax in
Strange Fruit 〜 奇妙な果実 という形容詞は、それがジャズの中で用いられる
場合、白人達の集団リンチを受けて木に吊された黒人を夜明けに子供が目にす
ると、それが木から変な果実が垂れてると映った情景を指した歌のタイトルである
ことが多いですが、アーヴィンの付けたこのタイトルがそれと同義語なのか英語力
に自信がない私はその判断が付きませんでした。でもこの作品自体はかつてマッ
クス・ローチが放った社会派問題作の"We Insisit!"にとてもよく似た波動を感じます。
特に歌の部分、中でも#13.等の女性ヴォーカルは、ローチ盤のアビー・リンカーンを
下地にしているように感じます。それはそれとしまして、ここではアーヴィンのパフォ
ーマンスが随所で神懸かった冴えを見せます。中でも#3.の1分30秒の部分から
繰り返すパターンのフレーズ、これなどはまさに神の啓示かと思う瞬間です。でも
このアルバムのもっと良いところはそんな大げさな受け止め方をしなくても、アー
ヴィン特有のトランペット・パフォーマンスを思う存分楽しめる点で、彼がいつもさぁ
行くぞ!って感じでハイノートにジャンプする直前の間合いを計っている瞬間とか、
細部が見えてくると益々アーヴィンを身近に感じるのであります。あと、ここでも聴
かせるラテン・ジャズの#11.Beatが私は大好きなのですが9分超にも及ぶ大作で、
全体がとても情景描写的な作風、まるでクラシック音楽でいう管弦楽、交響詩みた
いに感じました。とにかく心に余裕をもってじっくりと聴きたい、聴き所も満載の文字
通り大充実のアルバム。自信をもってお薦めします。

2005 USA Basin Street Records BSR-0404
★★★☆

デビュー作とは思えない成熟ぶりを感じさせる充実作
Irvin Mayfield S/T
CD \2,500tax in
ドナルド・ハリソンのアルトと二管で奏でるテーマ部分からして
当たり!の感触。手法的にはオーソドックスなモード奏法です
がイマジネーションに裏打ちされたアドリブは目的地がはっき
している安心感があってなかなか凄いです。新世代のN.O.の
トランペッターの背負うことになる宿命、生まれた土地の伝統を
守る方向に行くのか、まだ誰も見たことのない新天地を目指す
のかそういった迷いは完全に吹っ切れてる姿を見ました。誰か
に似たスタイルを選ばない姿勢にもガッツを感じます。

1999 USA Basin Street BSR 0401-2
★★★★☆

完成度を求めた作品作り、そんな気概を感じる仕上がり
Irvin Mayfield How Passion Falls
CD \2,500tax in
このアルバムを聴いて吹き込み時22才とは誰が信じるでしょうか。ハイ
ノートの伸びやかさは特筆に値する輝きを放ち、フレーズの組み立ても
ありがちな常套句は少ないのが特徴。自己の音の追求に研究熱心で
努力を怠らない姿が想像されます。曲も全曲が彼のオリジナルで、アレ
ンジも含めてひねりが利いている佳曲が多く、そちらの才能も証明して
います。各員の音が集合体として凄まじいうねりを見せる"The Denial"
や朗々と歌い上げるバラード、"The Affair"でのリップ・コントロールの
正確さ等、いくつもの面でアーヴィンの将来性には身震いを覚えます。

2001 USA Basin Street BSR-0402-2
★★★★

端正さと破壊力を兼ね備えたパフォーマンス、当面の代表作はこれになりそう
Irvin Mayfield Half Past Autumn Suite
CD \2,500tax in
著名なN.O.の写真家でピアニストでもあるゴードン・パークスと大先輩ウイン
トン・マルサリス(tp)をゲストに迎えた3rdアルバム。そのパークスの深みのあ
るピアノと陰影に富んだメロを切々とオープンで吹く"Wind Song"でのアーヴィ
ンにぞくぞくっときました。ウィントン参加のブルース"Blue Dawn"はこれぞス
ローブルースの醍醐味を満喫できる師弟の共演。ピアノのイントロからして
そそられる #5. Flowerscapeはアルバムのハイライトとも言える内容、ハード
バップのテイストを滲ませつつモーダルな展開に突入、9分超という長尺を一
気に燃焼していきます。メインストリーム・ジャズの面白さが炸裂しています。

2003 USA Basin Street BSR-0403-2
★★★★☆